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鉱山、プランテーション、縫製工場


グローバル化の進展に伴い、好むと好まざるとに関わらず世界は増々近接し、複雑且つ密接に繋がっています。しかし、モノの生産、加工から流通、消費に至るサプライチェーンの具体的な現場は、最終消費者である私達からより遠く見えにくいものとなっています。さらに、途上国においても部外者がその内部に立ち入り、撮影を行う事は非常に難しくなりつつあります。それはもはや途上国においても内部情報やネガティブなイメージの流出は即座に市場からの脱落、或は追放に繋がりかねないからであり、その意味においても世界は鎖により結ばれているのです。

本作品は、アジア、アフリカ各国の鉱山、製造工場、リサイクル業者等と交渉し、撮影許可を得、その風景を捉えた記録の一部です。このような写真を通して、社会構造の一端を可視化する事をその目的としています。アウグスト・ザンダーの「二十世紀の人々」の様に、正確な記録の積み重ねによって顕在化する社会のある断面と、そこに立ち現れる美が私にとっての写真であり、それは写真の本質に向き合う作業だと考えています。そして乱暴に言ってしまえば、記録以上タイポロジー未満、或は、記録以上アート未満、の写真でありたいと願っています。

このプロジェクトは継続中であり、且つ帰結もありません。それは、記録し続ける事にこそ、この撮影の最大の意味があると考えるからです。始まりも終わりも、被写体に寄り添うストーリーも、私から皆さんに投げかけるメッセージもありません。私自身のイマジネーションなど取るに足らないものであり、被写体に全てがあります。

つてを辿り、相手にとってほとんど何のメリットも無いこの撮影をお願いし、その内部に入れてもらう事、そしてなんとかして被写体の前に辿り着く事が最も重要だと考えています。あと私に出来る事は、まっすぐカメラをセットし、操作を間違わない様に、そしてなるべく対象のディテールを損なわない様にシャッターをきるだけです。

鈴木 吼五郎


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